【レビュー】『風の谷のナウシカ』Blu-ray版


 予約注文していた『風の谷のナウシカ』Blu-ray版が昨日届いた。
 で、さっそく鑑賞。
 懐かしさと同時に、この作品は宮崎監督の原点だな……と思った。
 が、しかし……である。
 このBlu-ray版は、元のフィルムをストレートにデジタル化したわけではなく、ハイビジョンで鮮明すぎるゆえに、フィルムの粒状感をだすため、あえてノイズを加えている
 それについての記事が以下。

『風の谷のナウシカ』ブルーレイで登場!デジタル処理嫌いの宮崎駿監督も涙 – シネマトゥデイ

 デジタル処理を施せば、昔の作品をきれいにお色直しさせることなど朝飯前だ。しかし、同作の監督である宮崎監督が、昨今のデジタル処理に対して否定的な意見の持ち主だということは、長年の戦友である鈴木プロデューサーが一番よく知っていた。宮崎監督いわく、「色にぎらつきのある、品のない作品になってしまっている。ああだったはずがない。あれは作った人に対する冒涜(ぼうとく)ですよ」なのだそうだ。そこで宮崎監督が出した条件は、「公開時のものを尊重し、それ以上きれいにしない。プリントを焼く過程で付いた傷は取る。色パカ(色の間違い)は、そのままにする」など。これらを配慮し、約2か月かけてデータ化した。

 デジタル嫌いといいつつも、現在ではセル画を使わなくなっているのだから、なんか矛盾している。
 で、仕上がったBlu-ray版だが……

ノイズが目障りだ!
これはむしろ、オリジナルのクオリティを損なっている。

 ……と思った。
 うちの視聴環境は、40インチのフルハイビジョンテレビに、Blu-rayの再生にはPS3を使っている。Blu-ray対応のHDDレコーダーもあるのだが、古い型のため、画質的に劣るからだ。
 40インチで見ると、加えられたノイズのザラザラ感が、やたらと目に付く。キャラクターがアップのシーンは、我慢できる範囲だが、広角でキャラが小さくなると、キャラの顔がノイズに埋もれる。
 40インチでこれだから、もっと大きな画面だと、ノイズはさらに目障りになるだろうと思われる。

 これは処理としては失敗だよ。
 ストレートにフィルムをデジタル化してくれた方が、ファンとしてはうれしい。
 むしろ、元々のフィルムには、どう写っていたのかをハイビジョンで見たかった。それこそが、オリジナルに近い再現ではないのか?

 ノイズを加えることにこだわるよりも、原版に写り込んでいる傷や埃を取り除くとか、パーフォレーションのずれで画面がぶれるのを補正して欲しかった。
 せっかくのBlu-rayなのに、技術や特性を使いこなしていない気がする。

 技術的な仕上がりとしてのBlu-ray版には不満だが、作品としては大好きである。
 あらためて見直して、宮崎監督の原点はナウシカなんだなと思った。
 その後、制作された作品の多くは、ナウシカに詰め込まれたエッセンスやメッセージの再生産だからね。
 アニメとしての技術的なこととか、物語的な構成の点で、荒削りな部分は多いが、それを補って余るだけの面白さがある。
 パワーとインパクトのある作品だ。
 これ以降、作品的にクオリティは高まっていくわけだし、興行的にも成功していくわけだが、ナウシカにある「根源的な面白さ」は薄れていく。

 個人的には、宮崎監督の最高傑作は『風の谷のナウシカ』である。

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【補足】2010/08/04
 コメントで指摘されたことについて。
 たしかに、間違ってるね。
 DVD版やテレビ放映版を見ていると、ノイズ(グレイン)が目立ってしまう。
 解像度の問題といえばそうなのだが、精細な分、余計に気になるのも事実。DVD版の方が綺麗に見えてしまうのは、どうなのかな?…と思う。
 以下、関連記事。

asahi.com(朝日新聞社):「ナウシカ」風合い美しく ジブリがフィルム作品BD化 – マンガ+ – 映画・音楽・芸能

 デジタルデータ化されたポニョを家庭用テレビに映すと、ジブリ作品の特徴である柔らかな風合いが失われ、硬くなる。そこで、独自に開発した「ポニョフィルター」を通して、「ぼかさずに柔らかくなる」よう処理した。

 一方のナウシカではまず、フィルムを一コマずつスキャンしてデータ化。色の繊細な調整を加えて、BDの100倍のデータ量を持つ解像度の高いデータ原版を作り、BDに変換した。「フィルムには、かなり粒子の粗さがある。そうしたざらつき感を減らし、ほどよい精細度を保った」と話す。

 ポニョフィルターについて。

【インタビュー】『崖の上のポニョ』ブルーレイ化の難題は“ポニョフィルター”が解決 | RBB TODAY (エンタメ、その他のニュース)

奥井氏「これまで私たちはDVDを制作してきましたが、最近のプレーヤーだと、アップコンバートの画も非常にキレイなんです。もちろん、それに満足しているわけではないのですが、そこに置き換わるだけの魅力がブルーレイにあるのか?と。それとブルーレイは当然、HD解像度で出力されますので、一般的な家庭に普及している大画面のフラットパネルにブルーレイの画を映したときに、はたして我々の望んでいるクオリティの画が映せるのか、と。その点に非常に疑問がありましたし、もしかすると非常にハードルの高いものになるのではないかと。そこが少し足かせになっていた部分です」

ーー制作過程の中で、特に印象に残ったエピソードはありますか?

柏木氏「DVDのときには、データ自体をHDの形でいただいて、それをSDの解像度にスケーリングダウンするわけです。その時点でおのずとボケた画になるのですが、そこで副次的にジブリらしい柔らかい画になっている。ですがブルーレイの場合はHD解像度のまま収録しますから、逆にブルーレイとして出すからこそ問題になる部分が出てくるわけです。それで『画を柔らかくしてほしい』という要望を受けまして。柔らかくする方法として一番単純なのはボカすことなのですが、『ボカさないで柔らかくしてね』と言われました(笑)」

奥井氏「注文はその1点だけでした(笑)」

ーーその注文どおりに仕上がったということですね。

奥井氏「そうですね。言った立場で何ですが、すごい難題を吹っかけたつもりだったんですけど……もちろん、苦労はされていますよ(笑)。ですが、一発回答をいただきました」

ーー今回の作品用に何か特別な技術を用いたということなのでしょうか。

柏木氏「はい。ブルーレイ用マスター制作の中で、ある非常に特殊な、今まで恐らく誰もそんなことはやっていないだろうなっていうような変換処理をして、ボカさずに柔らかくするという映像を実現しました。PHLの中では“ポニョフィルター”って呼んでいます(笑)」

 ポニョフィルターの技術的なことについて。

【本田雅一のAVTrends】「GOEMON」Blu-ray版の画質を高めたパナソニックの新技術 -AV Watch

 同様にフィルムグレインの見え方も変化した。MPEG-2やVC-1では、パラパラと2~3枚のパターンが切り替わるようなグレインの見え方になるところ、従来のPHLエンコーダはコマ送りのようにぎこちないものの、グレインの流れが追えていた。ところが新エンコーダを用いると、グレインがスムースに流れるように見える。

(中略)

「その印象は間違いなく新エンコーダの効果です。詳しくはまだ言えないのですが、従来のMPEGエンコーダは、どんなものでもIピクチャとPピクチャで絵の骨格を作り、その間にあるBピクチャは単なる“つなぎ”という位置付けでした。しかし、新エンコーダはBピクチャの品質を画期的に向上させ、1 枚のフレームとして充分に通用する質に高めるんです」とコメントしてくれた。

 たとえばグレインが連続した動きに見えるようになったのは、これまでIとPしかハッキリと目立たず、間のBでのグレインパターンが描かれていなかったのに対し、間のBの再現性が高くなったので、動きが繋がるようになった、というわけだ。安藤氏は「時間軸が変化する中で、映像の中身がしっかりと詰まったまま、動いていく感じ」と話す。

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