「普通の生活」の普通の定義は?

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 選挙戦が始まって、あちこちの街頭で候補者が演説をしている。
 一部始終を聞いているわけではないが、通りすがりに断片的に聞こえてくる。
 先日、恵比寿駅前で、社民党の候補者が……

「普通の人たちの、普通の生活を守るため…」

 そんなことをいっていた。
 そこで、突っこみたくなった。

「普通」の定義とはなんだ?

 多数決による多数派のことか?
 平均による、平均値に達している人のことか?
 統計上の、ある中央値に分布する人たちのことか?

 それらの基準によって「普通」は違ってくる。
 ちなみに、「平均値」と「中央値」は同じではない。
 おそらく、「普通」という言葉の背景には、所得水準の意味が含まれている。
 所得平均が600万円である場合、「普通」の人たちは600万前後の人たちということになる。しかし、前述したように平均値と中央値は異なり、中央値はより分布数の多い方に偏る。
 中央値が400万円だとすると、「普通」は400万前後の人たちである。
 どちらを取るにしても、その基準になる「普通」から外れれば、「普通ではない人」ということになる。
 漠然としたイメージだけで「普通の生活」などと誤魔化すな、といいたい。
 「普通」とはなんなのか? その根拠を示せ。政治家ならね。

 もし、かの候補者のいう「普通」が、年収600万の人たちを指すのなら、私はその普通の中には含まれない。
 つまり、私は彼のいう「普通」の対象外なのだ。だから、彼の述べる政策は私には関係ない、という話になる。

 所得400万円以下が、「普通」ではないと定義されるような発言を、菅直人首相がしていた記事が以下。

菅首相:消費増税の還付対象 世帯別で半数近くに – 毎日jp(毎日新聞)

 菅直人首相は30日、消費税増税に伴う低所得者対策で還付対象とする世帯の所得水準に言及した。菅首相が例示したうち最も高い「年収400万円」は、世帯別では半数近くが対象になる計算。現行税制では、年収325万円(サラリーマンで4人家族のモデル世帯)が所得税を支払う最低額となっており、やや高めの水準になる。

 「年収400万円」以下は保護対象ということで、「普通」ではないと位置づけられているともいえる。
 しかし、「年収400万円」以下の世帯は、

 厚生労働省の2009年の国民生活基礎調査によると、年収400万円未満世帯の割合は46.6%。夫婦子2人の4人世帯では18.0%だが、65歳以上だけの高齢者世帯に絞ると80.6%。母子世帯では91.2%に達し、一定の負担緩和効果が期待できる。

 ……というように、分布数としては多い。
 400万という線引きは微妙だ。
 まぁ、どこで線引きをしても微妙ではあるのだが。
 399万円の人は還付対象になるが、401万円の人は対象外。わずか2万円の差だが、ほとんど差はないといってもいい。厳密には1円差でも、対象になるかどうかの分かれ目。
 こういうのは他にもあるが、システム上の盲点というか欠陥だろう。

 うちは境界線の微妙のところにある(^_^;
 400万をほんのちょっと超える程度だからだ。
 消費税が10%になるとしたら、399万円の場合、還付金は最大で約39万円(収入のすべてが消費に回ったと仮定)。401万円だと還付がないわけで、実質的な収入は399万円の人の方が、38万円多いことになる。
 この差は、大きい。低所得者にとってはね。

 そもそも「普通」という概念を考えるときは、「自分」が基準になることが多い。自分はこうだから、これが普通……と考える傾向にあるからだ。
 議員の所得は、議員報酬だけで1000万円を超えているわけで、すでに「普通」の人よりも上。
 そんな政治家がいう「普通」なんて、胡散臭い。彼らは生活に貧窮しているわけではないからだ。
 サラリーマンの実収入については……

サラリーマン世帯の実収入、2カ月連続減少の44万3,429円 – 総務省統計局 | ライフ | マイコミジャーナル

サラリーマン世帯の実収入は44万3,429円(前年同月比実質2.0%減)で2カ月連続で減少。

 ……というようなデータがある。年収にすると約528万円か。これは平均だが。

 もろもろのことを踏まえて、「普通」の定義を考えると……

 年収400万円前後は、普通ではない。
 少なくとも、500万円以上が「普通」

 ……ということになりそうだ。

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