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昨日のエントリの「事業仕分け」に関連して。

猪瀬直樹氏がコラムで苦言を書いていた。
猪瀬氏は私が尊敬する人物でもあり、その発言にはいつも注目しているのだが……

安易な事業仕分けが周産期医療の悲劇を招く | 時評コラム | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

結論ありきのパフォーマンス

事業仕分け作業では、1つの事業につきわずか1時間のヒアリングで、事業仕分け人が判定を下している。結論ありきの誘導尋問だから意味がない。これではただのセレモニーである。

447の対象事業のなかには、いかにもムダとわかる独立行政法人関連の事業も含まれているけれども、緊急性を要するような重要な事業までが乱暴にカットされている。短時間で個別の事業についての是非を決めるのはおかしい。

(中略)

事業仕分けの様子を見て、「まるで紅衛兵だ」という印象を受けた。このままのやり方なら仕分け人は、主計局の紅衛兵である。中国の文化大革命では、無実の人たちが断罪された。事業仕分けの対象事業のなかには、たしかにムダな事業もあるけれども、無実の事業もたくさん含まれている。それらを一緒くたにして、1時間の即決人民裁判で断罪していくのだから、これは民主主義の否定である。

447の事業仕分けを一気にしようとしているわけだから、時間はそんなにかけていられないという事情もあるだろう。
いささか乱暴だというのも、一理ある。

とはいえ、いままでこういうシステムがなかったところに、導入したという意味はあるように思う。
猪瀬氏が副知事でなかったら、この仕分け人のメンバーに入っていたのではないかと思う。仮にそうなっていたら、どう対処したのだろうか?
道路公団に対して猪瀬氏が奮戦してた頃の発言を思い出すと、今回の仕分け人の発言と似ているような気がする。

時間をかければいいのか?……というと、必ずしも時間をかけることが良い結果を導くとは思えない。時間をかけるほどに、要求する側は画策を講じるだろう。猪瀬氏が道路問題で直面したように。

事業仕分けについては、事前に以下のようなプロセスがあったと報じられている。

東京新聞:11日から『事業仕分け』 完全公開 抵抗封じ:政治(TOKYO Web)

 刷新会議は事業仕分けを担当する「切り込み部隊」として、民主党の枝野幸男元政調会長ら衆参議員七人と民間人でつくるワーキンググループ(WG)を編成。WGが先月末から財務省や省庁からの聞き取り調査を行い、三千とされる国の事業から俎上(そじょう)に載せる候補の約二百四十事業を選んだ。刷新会議は九日夕に第二回会合を開き、この中から二百十程度の事業を仕分け対象として決定する運びだ。

つまり、いきなり呼びつけられて判定を下されているわけではないのだ。査定される側には、ある程度の準備期間があったわけだし、反論材料を示す余地もあったように思う。

公開の事業仕分けは、いわば「最終弁論」の場だ。
そこで有効な反論ができなければ、要求は通らない。そのチャンスを活かせなかったのは、「プレゼン能力のなさ」なのだと思う。

仕分け人側に財務省のアドバイスがあったとも報道されているが、だとしてもその攻勢を跳ね返すだけの論拠を提示できなかった要求側の非力さが、結果として廃止や凍結に至ったのではないか?

事業仕分けを裁判と見立てている記事が多いが、そうであるなら要求側も弁論をしっかりとやる戦略を練ればいい。
要求側の筋が通っていて、追求側の論点がずれていれば、NOの判定はできなくなってしまう。

これはディベートである。
相手の論点のスキを突いて、いかに反論し、持論が正しいことを証明するかである。
そういう駆け引きは、日本人が苦手としていることでもある。
要求側も、弁舌の達者な弁護士を助っ人に呼んでくるくらいの作戦を立ててもいいのかもしれない。

それにしても、「まるで紅衛兵だ」というのは言い過ぎな気がする。
少なくとも、すべてが公開されているのであり、秘密裏に破壊工作や暴行・致傷、言論の弾圧をしているわけではない。
例えとしてはわからないでもないが、猪瀬氏らしくない例えだと思う。

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