事業仕分けでの、予算を要求する側と必要性を追求する側の議論を見ていて、要求する側の説得力……つまり、プレゼンテーション能力が足りないことが見てとれる。といっても、すべてを見ているわけではないし、テレビで登場した部分だけの話だが。

今まで、公開の場でこうした議論がなかったために、なにをどう主張したらいいのか戸惑っているようでもある。
そこが「お役所仕事」の馴れ合いなのだろう。
必要ならば、必要性を論理的かつ具体的に示せばいいのだが、感情的な「お願い」になってしまっている。
これでは説得力がない。

これが民間だったら、仕事を受注するために、それこそプレゼンテーションが重要なカギになる。複数の会社が参加する「コンペ」形式の場合、いかにプレゼンするかが仕事の成否になる。仕事を取れなければ、死活問題ですらある。

国の予算を使うからには、その事業がいかに必要で将来どんな役に立つか……といったことを、具体的に目標と成果を示せなくては説得力を持たないだろう。
見ていた限りでは、そうした「ビジョン」というのは乏しかった。

事業仕分けの対象となった、スパコンについての記事が以下。

「2位ではだめなのか」 次世代スーパーコンピュータを「仕分け」した議論 – ITmedia News

政府の行政刷新会議の13日の仕分け作業は、次世代スーパーコンピューターの開発予算に事実上の「ノー」を突きつけた。議論の方向性を決定づけたのは「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」という仕分け人の発言。結局、「科学技術立国日本」を否定しかねない結論が導かれ、文科省幹部は「日本の科学技術振興政策は終わった」と吐き捨てた。

次世代スパコンは最先端の半導体技術を利用。ウイルス解析や気候変動問題のシミュレーションなど広範な研究での活用が期待されている。「1秒あたり1京回」という計算速度が売りで、現在、世界一とされる米国製の10倍の速度になる算段だ。平成24年度から本格稼働の予定だが、総額約700億円の国費が今後必要なため、財務省は見直しを求めている。

この日、口火を切ったのは蓮舫参院議員。その後も「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか」(泉健太内閣府政務官)「一番だから良いわけではない」(金田康正東大院教授)「ハードで世界一になればソフトにも波及というが分野で違う」(松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長)などと、同調者が相次いだ。

文科省側は「技術開発が遅れると、すべてで背中を見ることになる」と防戦したが、圧倒的な「世界一不要論」を前に敗北。同研究所の理事長でノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治氏は「(スパコンなしで)科学技術創造立国はありえない」と憤慨していた。

国産の技術で……という気持ちはわからないでもないが、技術立国といいながらも、コンピュータに関してはコアとなるCPUでは、すでに主導権を失っている。
周辺技術ではどうかというと、メモリですら韓国に抜かれてしまっている。液晶は頑張ってはいるものの、こちらも韓国や台湾のメーカーが追い上げている。

EDN Japan | Micron社、DRAMトップ3に返り咲き

 米iSuppli社によると、2009年第1四半期に、米Micron Technology社はDRAMトップ3の座に返り咲いたという。Micron社の同期DRAM市場シェアは14.6%で、前期の13.8%、前年同期の11.3%から数字を伸ばした。最悪だった2006年第1四半期の4位からカムバックを果たしたことになる。シェアトップはSamsung Electronics社、2位は韓国Hynix Semiconductor社である。Micron社に抜かれたエルピーダメモリは4位に順位を下げた。

国産のパソコンで、国産の部品がどのくらいなのか?

明確なデータはないのだが、パーツ屋に行くと大部分は海外製のものらしい。日本製のパソコンといいながらも、中身は海外製のパーツの寄せ集めで、組み立てているだけ……というのが実態のようだ。

パソコンのコアであるCPUやGPUはアメリカ製、OSもアメリカ製、パーツは韓国製や台湾製、液晶だけは日本製、主要なアプリケーションも外国製……という製品は多い。技術立国などというのが恥ずかしい現状だろう。

国産のスパコンは、おもに富士通が作っているが、富士通製の汎用CPUは出ていない。

【PC Watch】 富士通、世界最速のSPARC64 CPU「SPARC64 VIIIfx」

 開発コードネーム「Venus(ビーナス)」こと「SPARC64 VIIIfx」がそれで、浮動小数点演算処理速度は128GFLOPS。45nmプロセスで生産され、約2cm角のダイ上に集積しているコア数を、従来の4つから8つへと増やすことで高速化を実現。メモリおよびメルモリコントローラも1チップに集積した。

同社によると、現行のIntel製CPUの約2.5倍の高速演算を可能としながらも、消費電力は3分の1に抑えたという。同社が2008年に出荷したSPARC64 VIIに比べても約3倍の相対性能を発揮する。

富士通が世界最速のCPUを開発したのは、ベクトル型CPUのVPP5000以来、約10年ぶりのことになる。

……と、こんな技術があっても、スパコンにしか使わないのでは価値は半減してしまう。Intelを凌駕するスペックならば、それを普通のパソコンにも導入すべきなのだ。それでシェアを奪還できてこそ、技術立国だと思う。

一般のパソコン用に製造して売るよりも、国に売った方が少ない数で高く売れるのだろう。メーカーとしては美味しい仕事なのかもしれない。

スパコンに関連して、PS3を並列に使ってスパコン並みの処理能力を引き出したという記事があった。少々古い記事だが。

スーパーコンピュータ代わりにPS3–米研究者が実践:ニュース – CNET Japan

 今度は他の研究者がPS3を科学の進歩のために利用している。Wiredによれば、マサチューセッツ大学ダートマス校の天体物理学者Gaurav Khanna博士は8つのPS3を繋ぎ、理論重力波の研究で数値計算を処理させている。この重力波は巨大質量のブラックホールが星を飲み込む際に生まれる副産物として生まれるはずのものであり、Khana博士はこの重力波がいずれ観測することが可能なだけの強さを持つかどうかを判定するのにこの処理能力を使っている。

これまでは、この数値処理のためにスーパーコンピュータの使用料に5000ドルも支払う必要があった。Khanna博士はWiredに対し、ソニーはPS3を無料で提供してくれたが、そうでなかったとしてもスーパーコンピュータを使用するよりもPS3を使った方が安く済んだだろうと話した。

「基本的に、これはほぼ代わりのものとして使える。スーパーコンピュータを使わなくて済むようになったことは、いいことだ」(Khanna博士)

PS3に使われているCELLは、ソニー、東芝、IBMの3社の共同開発だが、PowerPC(かつてMACに使われていた)をベースにしているから主導権はIBMなのだろう。

PS3を8個つないでスパコン並みになるのなら、100個でも200個でも並列処理できるシステムを作れば、700億円もかからないだろう……と、思ってしまうのだが?(^_^)
研究のためにスパコンが必要ならば、PS3スパコンも検討してみるべきだろうね。

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