調査・統計の数字のトリック」や「恣意的な数字が判断を狂わせるときもある」でも書いたことだが、以下のニュースの数字もやや疑問符である。

秋葉原通り魔事件後、17人を摘発補導 7割は定職つかず 警察庁(産経新聞) – Yahoo!ニュース

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件後、インターネットの掲示板に何らかの犯罪の予告を書き込む事件が23日現在、全国で17件あり、17人が摘発・補導されていたことが24日、警察庁のまとめで分かった。このうち12人が逮捕、4人が書類送検され、1人が補導された。また警視庁は24日、1人を逮捕した。
容疑者の7割にあたる12人が定職に就いておらず、このうち7人は20代男。また、17人のうち6人が未成年で、最年少は13歳の男子中学生だった。

この記事は、「定職についていないから犯罪に走った」と暗に示唆している。深読みすれば、定職についていない若者を批判しているのだ。

だが、ちょっと待て。

統計上のことからいえば、第一にサンプル数が17件しかないのは、全体像を推測するにはあまりに少なすぎる。
第二に、ここでいう定職とは、正規雇用者のことだろうし、派遣やアルバイトは定職ではないという分類なのだろう。そのように明確には書いていないが、おそらくそういう判断だ。

うがった見方をすれば、「非正規雇用者は定職についているとはいえない」……「それは悪いことだ」……と言いたげだ。

17人のうち12人が正規雇用ではないということでは、確かに7割が非正規雇用者か無職ということになる。
だが、統計上のことから考えれば、統計の誤差として「標準誤差率」というのがある。

サンプル数が17件しかない場合の70%には、標準誤差率が±21.8%あることなる。つまり、48.2~91.8%の幅がある。(便利な計算スクリプトを提供しているサイト→Sampling Error Chart

さて、総務省発表の「雇用形態,年齢階級別役員を除く雇用者数」(平成19年)によれば、15~24歳の非正規雇用者の割合は、46.4%となっている。

つまり、前述の記事のサンプル数では標準誤差率の下限が、「非正規雇用者の割合は46.4%」に近くなる。また、未成年で学生であれば就業していなくても不思議ではないし、総務省のデータには無職や失業中の数字は含まれていない。

ようするに「17人を摘発補導 7割は定職つかず」と鬼の首を取ったかのように煽り立てるような結果ではない……ということなのだ。
ある一点だけの特徴から、結果を誘導しようとする書き方には、作為や偏見を感じる。

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