ときどき出てくる話題の「」だが、大林組は2050年にも運用可能だとしている。前にも同じような発言があった。
まぁ、現実的には2050年は無理だろうけどね(^_^)

深宇宙に開かれた“港”「宇宙エレベーター」 大林組が語る2050年の未来 | THE PAGE(ザ・ページ)

 
月を超えて火星、さらにはその先へ ── わたしたち人類は、一体、宇宙のどこまで行けるのだろう。宇宙空間に探査機などの宇宙船を送る“港”となる静止軌道上の「宇宙エレベーター」は、2050年の運用開始も可能という。

(中略)

大まかに試算して、駅やケーブルの建設費は約10兆円くらいになると見ています。リニア中央新幹線が数兆円規模ですので、宇宙エレベーターのメリットが認識されれば、実際に投資が行われる可能性は十分あります。

ケーブルの建設方法を検討したところ、施工には約20年かかるとの試算結果がでました。ケーブルを静止軌道上まで運んで、地球上に向けて、それから地球と反対側に向けてそれぞれ伸ばす作業に約1年。残りの年数で、ケーブルを太くしていく作業を行います。

(中略)

宇宙エレベーターは、1つの国が単独で完成、運用すべきものではないでしょう。その国が宇宙関連ビジネスを独占する状況になりかねませんし、敵対国がケーブルなどを破壊する危険もあります。世界の平和が保たれないと実現しにくいプロジェクトと言えるかもしれません。やはり、宇宙エレベーターは世界各国が協調し、計画的に建設を進めるのが望ましいでしょう。逆に、この宇宙エレベーターのプロジェクトが、国際協調の契機になれば良いと考えます。

ちなみに、記事では「宇宙エレベーター」と表記しているが、「軌道エレベータ」とするのが普通。「宇宙エレベーター」は素人向けの表現なのだろうが、なんだか安っぽい響きに聞こえる。

過去記事にも書いているが……

軌道エレベーターの記事
軌道エレベーターの実現性は低い(1)
軌道エレベーターの実現性は低い(2)

技術的・運用的な問題点は、過去記事で指摘しているとおり。
オリンピック関連の建設費ですら、当初見積もりよりも4倍に膨れあがっているわけで、超巨大プロジェクトである軌道エレベータであれば、軽く10倍くらいには膨らむだろう。
つまり、100兆円。
平成28年度の日本の一般会計予算は約96.7兆円なので、ほぼ国家予算並み。それだけの巨額投資をして、採算が取れるのかどうか。この場合、採算は度外視したプロジェクトにするというのも方向性としてはあるが、はたして国民がその負担をよしとするかどうか。

建設期間が20年というのは楽観的で、100年計画になるかもしれない。20年でもかなり長いが、初期に敷設した資材が20年で劣化する可能性もある。宇宙空間では大量の放射線(宇宙線)が飛び交い、温度の高低が激しいため、地上とは比べものにならないほどのストレスがかかる。それに耐えうる素材というのは、現存しない。
ISS(国際宇宙ステーション)は1998年に建造が始まったが、18年経ってかなり老朽化しているため、本来なら今年で運用を終える予定だった。2024年まで運用期間が延長されだが、それでも26年が耐用年数だ。
軌道エレベータの建設が20年で完成せず、30年かかると、完成したときには一部は耐用年数を超えているという事態もありえる。半恒久的な施設としての軌道エレベータは、耐用年数が少なくとも100年は必要だろう。はたして、それは可能かどうか。

技術的な問題よりもやっかいなのは、政治的な問題だ。
軌道エレベータは赤道上に建設しなくてはならないので、日本が単独では建設できない。赤道上の国々は、政情不安なところが多く、建設開始当初の政府が転覆されて、軍事政権が誕生したりすれば計画そのものが反故にされかねない。たとえ無事完成しても、運用を独占するかもしれない。
軌道エレベータは、それを持つ国と持たざる国との紛争の火種になる。便利なものだが、同時にやっかいな代物だ。

記事中に「世界の平和が保たれないと実現しにくいプロジェクト」とあるが、歴史上、一度も実現していない難題だ。
世界政府というのは理想像ではあるが、数千年は先の未来ではないかと思う。
EUは、そう遠くない未来に崩壊しそうだし、大国のアメリカ合衆国や中国も分裂するかもしれない。世界情勢は多極化、分裂化の方向に向かっているので、軌道エレベータを建設できるような世界平和は訪れそうにない。

夢。
軌道エレベータは、夢の世界だね。
技術的なブレークスルーよりも、政治的・経済的な新たなシステムを構築するブレークスルーが必要になる。
そんな未来が……あるといいのだが。

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