島田氏「火星が人類の植民地になる日は来るか」←その方法では無理

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Multifunction Mars Base

Multifunction Mars Base

 レーザー推進システムで極小の探査機をアルファケンタウリに飛ばそうという計画を、ホーキング博士たちが発表していた。
 そのニュースについての、とんでもない誤解をしている記事。

島田範正のIT徒然 ≫ 火星が人類の植民地になる日は来るか

恥ずかしながら「レーザー推進システム」って初めて知りました。宇宙船の背後に強力なレーザー光線を照射し、その反動で前進させるのだとか。

(中略)

新聞記事には「3日で冥王星を通過する」とありました。ということは米航空宇宙局(NASA)が目論んでいる「2030年代に火星に人間を送り込む」という計画にも大きなプラスになりそうな印象です。

(中略)

これは特殊な無人探査機の場合で、重量のある有人宇宙船の場合は1月ほどかかるようです。

 レーザー推進システムでは、無理だよ(きっぱり)。

 ホーキング博士たちが飛ばそうとしているのは、手のひらに載るような極小の探査機である。サイズが小さいということは、質量も小さく、少ない力で押すことができる。だから、レーザー推進で探査機を押すことができる。

 初歩的な物理なので、そこのところ、ちゃんと理解しよう。

 人間が乗れるサイズの宇宙船を、レーザー推進で飛ばそうとしたら、とてつもなく巨大な帆が必要になる。また、照射しなければならないレーザーの出力も、とてつもなく莫大なエネルギーが必要だ。
 理論的には可能でも、現実的に造ることはかなり難しい。

 仮に3日で火星に到達……というのは、ものすごいスピードで飛ぶということ。

 地球~火星間の距離は、もっとも近づいたときで約5400万kmなので、それを3日、72時間で飛ぶには、平均時速75万kmを出さないといけない。
 スタート時は速度ゼロであり、火星に到達したら停止しないといけないので、行程の半分までを加速、残り半分を減速することになる。
 計算すると……

 加速度は、約3.22m/s^2
 加速度をGで表すと、約0.33G
 中間点での速度は、約41万6667m/s、150万km/h
 
 ……となる。

ただし

 このレーザー推進システムには大きな欠点があり、地球から照射するレーザーで加速はできるが、減速ができない。減速するための推進剤を宇宙船に積まなければならず、時速150万キロで飛んでいる宇宙船を止めるのに、どれだけの燃料がいるのか……誰か計算してください(^_^)b
 月面着陸のときに使ったサターンV型ロケットの総重量は、3,038,500kg(3,038.5トン)だったが、大部分はエンジンと燃料が占めていた。それよりも巨大になるだろうことは想像がつく。

 島田氏も書いているように、現実的に有人宇宙船で火星まで行くには、1か月~数か月はかかる。それも、より効率のいいエンジンがあればの話。現状の化学燃料ロケットで行くのは、手こぎボートで太平洋を横断するくらいの難しさがある。
 核パルスエンジン、核融合エンジン、反物質エンジンなど、理論的には考案されているが、いまだSFの世界の宇宙船が開発されないと、火星に植民地を作れるほど気軽には行けないよ。

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