今と未来の新語のいろいろ


未来の気候予測は間違いだらけ?」に続いて、「未来」の話。

未来といっても、現在進行形を含む近未来。
新しいテクノロジーや新しい価値観が次々と生まれるため、それに対する新しい単語も出てくる。
いわゆる「新語」
新語は廃れると「死語」になってしまうが、現在表出している新語はどれだけ生き残っていくだろうか?

知らないと恥ずかしい21世紀のフューチャリスト用語20 : ギズモード・ジャパン

毎日どうでもいい情報に振り回されて肝心のことが見えてない気がするみなさま、そんな「抑制的反昇華」状態で「知性爆発」に突入したらあっという間に「テクノロジー失業」ですよ? さあ、今から「コベイランス」と「道徳能力増強」と「知性増幅」でこの「ミュールズ」だらけの「アントロポセン」の新世紀を乗り切りましょう。

……と、ここに登場する新語は以下の通り。

1. Co-veillance(コベイランス=相互監視)
2. Multiplex Parenting(多親育児)
3. Technological Unemployment(テクノロジー失業)
4. Substrate-Autonomous Person(底質独立型人間)
5. Intelligence Explosion(知性爆発)
6. Longevity Dividend(長寿配当)
7. Repressive Desublimation(抑制的反昇華)
8. Intelligence Amplification(知性増幅)
9. Effective Altruism(効率的利他主義)
10. Moral Enhancement(モラル・エンハンスメント=道徳能力増強)
11. Proactionary Principle(積極行動原則)
12. Mules(ミュールズ)
13. Anthropocene(アントロポセン=人新世)
14. Eroom’s Law(イルームの法則)
15. Evolvability(進化可能性)
16. Artificial Wombs(人工子宮)
17. Whole Brain Emulations(全脳エミュレーション)
18. Weak AI(弱い人工知能)
19. Neural Coupling(ニューラル・カップリング=知覚カップリング)
20. Computational Overhang(コンピュータのオーバーハング)

詳しくはリンク先を読んでいただくとして。
それぞれについて、コメントしていこう。

1. Co-veillance(コベイランス=相互監視)
街中に監視カメラが多数設置されているが、普段、その存在をあまり気にすることがなくなった。プライバシーとセキュリティを天秤にかけて、セキュリティの方が重要だとする結果だ。実際、犯罪捜査で犯人を特定したり、失踪者の足取りを追ったりするのに役立ってはいる。
一般市民を対象とした監視カメラだが、権力を持つ者……高官や政治家を監視するカメラも必要かもね。賄賂などの汚職は絶えないし、与党・野党を問わず問題を起こす議員はいる。大臣室や各議員・各高官の仕事場にも監視カメラを設置して、仕事中は常に監視していれば、真面目に仕事するかもしれない(笑)。

2. Multiplex Parenting(多親育児)
遺伝的な多親でなくても、代理母出産では胎児をお腹の中で育てた親もいるわけで、親子関係はややこしくなっている。昔ながらの、生みの親、育ての親というのもあるし、親子や家族とはなんなのか?……という問題でもある。
デザイナー・ベビーは、いずれ出てくるのだろうけど、遺伝的に天才を作り出すことができるとして、はたしてその子たちが世界をどう変えていくのかは未知数。遺伝子差別とかいう問題は起きそう。

3. Technological Unemployment(テクノロジー失業)
これは最近、ちょくちょく話題になっているね。
AIが進化していることで、人の労働力が取って代わられる状況というのは、そう遠くない未来にやってくる。労働は生きていくための収入を得るものだが、ロボットやAIが人間の労働を代替してくれるのなら、人間が働くことの意味や価値観を変えることにもなりそう。
労働はすべてロボットやAIにまかせ、人間は労働をしなくても生きていける社会システムになれればいいんだけど、そんな理想郷の実現は簡単ではないね。

4. Substrate-Autonomous Person(底質独立型人間)
攻殻機動隊のような、電脳とサイボーグの世界だね。
そのためには、バーチャルとリアルを融合できるようなインターフェイスが必要になる。端的にいえば、脳とコンピュータを直結できる技術。初歩的な実験は行われているが、脳が発する信号を、直接読みとることはできていない。可能性はあるが、前途は多難。

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5. Intelligence Explosion(知性爆発)
「知性爆発」とは、AIのような人工システムの知性がいきなり爆発的増大を始める現象を指す。」ということなのだが、ここでいう「知性」とはなにか?……が問題。
囲碁に勝利したAIに知性があるかというと、それはちょっと違う。囲碁AIは囲碁ができるだけであって、美味しいケーキを作ったり、統一場理論を完成させることができるわけじゃない。従来のノイマン型コンピュータの延長線に人間を超えるAIの可能性はないのではと思う。あるとすれば、量子コンピュータによるAIの登場まで待たないといけないように思う。

6. Longevity Dividend(長寿配当)
100歳を超える長寿、あるいは不死というのは、人間の欲の最たるものだろう。脳を除く肉体は、移植やサイボーグ化で代替は可能だろうが、脳の劣化はどれだけ抑えられるのか。
SF的な話でいえば、脳に宿る「意識=魂」をコピーして、電脳なり真っ新な脳にインストールすることで「個」の持続性を保つ……という方法もある。遠い未来には、そんなことも可能にはなるだろうが、「生」と「死」の意味や考え方が変わってしまうね。

7. Repressive Desublimation(抑制的反昇華)
現在の日本は、ちょっとだけ抑制的反昇華の社会になっているようにも思う。同調圧力が強い閉鎖的な社会なので、我慢すること、逆らわないこと、突出しないことを秩序として「良し」とする感覚。誰かに強制されているわけでもないのに、「世間」とか「世論」という漠然としたイメージで、社会が自主的に抑制してしまう。
日本は「平等」と「同質」を混同しているよね。

8. Intelligence Amplification(知性増幅)
リンク元に引用されている画像は、スタートレックTNGのレジナルド・バークレー。なぜ彼の画像なのかは、たぶん、AIの作り出すホロデッキの依存症だったことに関係していると思われる。
スタートレックの物語中では、ホロデッキは重要なシチュエーションになっていたが、それを作り出しているのは艦のAIだ。ボイジャーでは、ドクターもホログラムのキャラクターだった。AIの作り出したキャラクターは、人間と同等の知性も表現していた。それは「知性増幅」といえるものでもある。

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9. Effective Altruism(効率的利他主義)
効率を高めればより多くの人の命を救い、世界中でより多くの人の負担が軽減されチャンスが与えられる。」というが、なかなかに難しい問題。
貧富の格差は、利己的な欲望の結果だし、他者のために貢献しようとする人は少数派だ。

10. Moral Enhancement(モラル・エンハンスメント=道徳能力増強)
この言葉よりも、「Virtue Engineering(倫理エンジニアリング)」の方がインパクトがある。デバイスの進化で道徳能力が向上できるかどうかは疑問だけど。むしろ、昨今の炎上騒ぎをみると、ネガティブな本能の増強に走っている気がする。

11. Proactionary Principle(積極行動原則)
大衆の世論ではなく既存の科学をベースにリスクとチャンスを評価する」というのを、誰が評価するのかってことが問題。また、評価をされたとして、それをちゃんと実行できるのか。
評価と実行はセットでなければ意味がない。
たとえば、一票の格差の問題では、裁判所が違憲の判断をしても、政治家が実行しなければなにも解決しない。原発問題しかり、環境問題しかりで、評価が実行に結びつかないケースは少なくない。

12. Mules(ミュールズ)
語源となっている、アイザック・アシモフのSF小説の連作「ファウンデーションシリーズ」に登場する突然変異体「ミュール」とは……
ファウンデーションシリーズ – Wikipedia

ファウンデーション歴300年頃に銀河系の歴史に現れた人物。ターミナス近郊の惑星カルガンをほとんど無血で征服し「第一市民」を名乗った。
他者の精神を読み、ダイヤルをひねるように感情を操作する能力を持つミュータント(突然変異体)で、性的不能者であることから自嘲を込めて「ミュール(ラバ。生殖能力を持たない)」と名乗っている。その能力はラバのように強力で、彼に強い殺意を持つ仇敵ですら転向させて腹心の部下にしてしまうほどである。またラバのように頑固で底意地が悪く、不幸な生い立ちゆえに人類全体を憎悪しており、銀河系征服の野望を抱く。あくまで集団としての人間社会を扱う心理歴史学は、彼のようなミュータントによる「個体の干渉」を予測することはできず、第一ファウンデーション(ターミナス)はなすすべもなくその力に屈した。
その後は第二ファウンデーションを滅ぼすべく、その探索に全力を尽くすが、第一発言者の計略にかかって隙を突かれ、精神を矯正されて心の平穏を得て、まもなく短い寿命を全うした。後世では有能な統治者でもあったと評価されている。

ファウンデーションシリーズは高校生のときに読んだが、夢中になったね。ハインラインの「異星の客」と並ぶ、強い影響を受けた作品。
しかし、この言葉は定着しないと思う(笑)。


異星の客 (創元SF文庫)
R.A.ハインライン
東京創元社
1969-02


13. Anthropocene(アントロポセン=人新世)
今の地質年代。人類が生態系を本質的に変容させているのが特徴」ということなのだが、人類も生態系の一部なのだから、現在の変容は自然のシステムの一部だと思うよ。
かつての恐竜全盛時代には、恐竜が生態系を変容させていたはずだ。工業の発展によって、人為的に生態系を変えているといわれるのだが、それすらも地球のシステムの一部だと、私は思う。地球が誕生して46億年のうち、人間の文明が起こって関与しているのは、たかだが1万年。近代的な工業化が始まってから、わずか300年そこそこ。人類は小さな存在だよ。

14. Eroom’s Law(イルームの法則)
例として製薬産業が挙げられているが、経済成長などにも当てはまるのかな。
成長戦略として、いろいろとやっているが、リターンの効率が悪くなっているのはイルームの法則なのかもしれない。

15. Evolvability(進化可能性)
知性増幅にも関連したことだが、テクノロジーの進歩によって、文化(知性)が進化するということか。
ただ、進化している部分と退化している部分もあって、「知性格差」とでもいえるような現象は起きていると思う。歩きスマホは退化の一面だね(笑)。

16. Artificial Wombs(人工子宮)
人工子宮というと、数百年先の未来を想像する。完全に体外で胎児を育てることができるようになったら、社会や人間のありようも変わりそう。男女の関係性も変わるだろうね。

17. Whole Brain Emulations(全脳エミュレーション)
人格あるいは「心」をコピーできるのか?……という話だけど、そもそも「心」とはなにか?ってのが問題。
心をコピーできるとしたら、心にはデータという実体があることになる。たくさんのコピーを作ったら、たくさんの「自分」が存在することになり、どれがオリジナルかわからなくなってしまう。
「われ思う故に我あり」というのは、じつは脳の錯覚かもしれない(笑)。粘菌の実験で、脳がないにもかかわらず、迷路で最短距離の経路を見つけ出す……というのがある。心がなくても、与えられた条件の中から答えを導き出すことは可能なのだ。私たちの脳は、それを高度に処理しているだけだとしたら、心の存在は幻想という可能性もある。

18. Weak AI(弱い人工知能)
これは良い言葉。
AIがなにかと話題になるため、人間がAIに支配されるのではという誇大妄想も起きてしまうが、現在の弱い人工知能には、その可能性はない。ワトソンやSiri、あるいはPepperに人間的な親近感を抱いてしまうのは、人間が勝手に感情移入しているだけなのを忘れてはいけない。現在のAIは、粘菌と同じく、たくさんの選択肢の中から最適解を導いているだけなのだ。

19. Neural Coupling(ニューラル・カップリング=知覚カップリング)
映画「ブレインストーム」や「ストレンジ・デイズ」の世界だね。
麻痺した感覚を取り戻すのにはいいとしても、娯楽目的に応用されるといろいろと問題は起きそう。ストレンジ・デイズに出てきたような、知覚カップリング中毒とかね。
でもまぁ、早くても21世紀末~22世紀の話かな。

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ストレンジ・デイズ [DVD]
レイフ・ファインズ
日本ヘラルド映画(PCH)
1999-04-21


20. Computational Overhang(コンピュータのオーバーハング)
コンピュータを動かすためのプログラムは、基本的に人間が設計するわけだが、そのためにバグがあったりする。AIが自ら設計してプログラムを作れるようになれば、バグがなく、無駄のない、高度なものができるかもしれない。
暴言を吐くようになったAIのチャットボット「Tay」の例は、教育の仕方が悪ければ有害なAIにもなりえることを示唆している。オーバーハングによってAIが飛躍的に進化するとしても、それが良い方向かどうかは、人間次第だともいえる。ただ、人間を模倣するAIは、人間的であればあるほど、善と悪の両面を持つことになる。


【まとめ】
この20個の新語のうち、10年後も残っている言葉は1つか2つだろうね。
未来を感じさせる言葉と概念ではあるのだが、現実はなかなか予想通りには進歩・変化していかないもの。
スマホやSNSは新時代の発明となったが、その時代も峠を越して停滞から下降のステージに移りつつある。次世代のツールとなるものを、誰が、どこが発明するか。少なくともAppleではないとはいえる。
AIが重要な役割を果たすだろうことは予想できるが、どういう形でAIが社会や時代を変えていくのか。
スマホが過去の遺物となり、人々が新しいオモチャを手にした時代を、見てみたいものだ。

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