ノーベル賞「生理学・医学賞」で、大村智氏が受賞したのは既報のとおり。
 喜ばしいことだが、事前の予想では名前すら挙がっていなかった。

ノーベル賞「生理学・医学賞」今年の受賞は? 日本科学未来館が予想 | THE PAGE(ザ・ページ)

《生理学・医学賞》

 生理学・医学賞は、「病気の解明や治療法の開発」、「生命研究に欠かせない技術開発」、「生命の基礎メカニズム」といった生命に関するテーマが毎年受賞しています。

(中略)

免疫制御分子の発見とがん治療への応用=ジェームズ・アリソン(James P Allison)博士/本庶佑(ほんじょ・たすく)博士

(中略)

設計図を自由自在に、ゲノム編集ツールの開発=ジェニファー・ダウドナ(Jennifer Doudna)博士/エマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)博士

(中略)

オートファジーの分子メカニズムの研究=大隅良典(おおすみ よしのり)博士

ノーベル賞候補予想:森、坂口氏ら18人…米情報会社発表 – 毎日新聞

 米文献情報会社トムソン・ロイターは24日、論文の引用回数などに基づいて予想した今年のノーベル賞の有力候補18人を発表した。このうち日本人は医学生理学賞で、森和俊・京都大教授(57)と坂口志文・大阪大特別教授(64)の2人を挙げた。

 ……という感じで、大村智氏は本命視はされていなかったようだ。
 ダークホース的に候補として予想していた記事がひとつあった。

2015年ノーベル賞を予想する 皆さまの予想・生理学医学賞 | 科学コミュニケーターブログ

大村智博士:この投票サイトでは去年も化学賞でお名前があがりました。ブログやミニトークとして公開したことはないのですが、ノーベル賞チームの古株メンバーである科学コミュニケーター田村真理子も毎年のように大村先生を挙げています。熱帯地方の風土病である河川盲目症やフィラリアの治療薬を開発したことで知られます。

 いずれにしても、予想候補に日本人が9人もいたことになり、受賞の可能性が高かったともいえる。

 一方で、中国人の屠氏の受賞はサプライズだったようだ。

時事ドットコム:ノーベル賞「国家」前面に=屠氏の受賞決定、各紙トップ-中国

【北京時事】中国の女性薬学者・屠※※(※=口ヘンに幼)氏(84)のノーベル医学生理学賞の受賞決定について、6日付の中国各紙は1面トップで取り上げた。持続的な経済発展へ科学技術の向上を重視する中国は、自然科学分野で初となる受賞を宣伝。個人の功績とともに「国家」を前面に押し出している。

(中略)

ただ、屠氏の業績は中国国内での評価より国外での授賞が先行した。新京報の社説は、屠氏が博士号や欧米への留学経験がなく、中国科学院などの会員でもない「三無科学者」と呼ばれていたことを指摘。

 快挙であることは間違いないが、中国の科学界や政権にとっては、苦々しい喜びなのではと邪推してしまう。「三無科学者」と呼ばれるほど、地位としては低く扱われていたわけだし、日本よりも厳しい縦社会と男尊女卑の中では妬まれるのではと心配してしまう。あえて女性科学者に賞を与えるのは、政治的なメッセージでもあるようにも思う。
 「国家」を前面に出しているといっても、屠氏の研究を国家プロジェクトとして後押ししたわけでもなかろう。自然科学分野でのノーベル賞は、これまでにも中国系の人の受賞はあるが、受賞時には中国籍ではなかった。

中国人・華人のノーベル賞受賞者 – Wikipedia

 中国籍で受賞したから、「国家」的功績と喧伝しているのだろう。劉 暁波(リュウ・シャオボー)氏が平和賞を受賞したときには、さんざん難癖つけたのに比べると、ずいぶん扱いが違うものだ。

 中国の人口は13億6782万人(2014年現在)。これだけの人口で、適切な教育と研究環境があれば、天才や秀才はたくさん出てくる素地がある。教育と基礎研究にどれだけ投資するかでもあるが、現在の中国にはその部分が欠けていて、優秀な頭脳が海外に流出してしまう。
 日本の科学研究の環境も、欧米に比べると恵まれているわけではないので、他国のことはいえない。現に海外の大学や研究機関に所属してる科学者は多い。
 大村智氏に賛辞を贈りつつも、国内の研究環境をもっと整えていくことは必要だと思う。

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