「攻殻機動隊」の「光学迷彩」が実現とな?

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 日本のサイバーパンク・コミックの先駆けともなった「攻殻機動隊」……略称「攻殻」。
 コミックからアニメ、映画、舞台へと広がりを見せている。
 近々、最新映画『攻殻機動隊 新劇場版』も公開される。

 コミックの初出は1989年。
 攻殻の前身ともいえる「アップルシード」が1985年。
 サイバーパンクの原点・原動力となった、ウィリアム・ギブスンのSF小説『ニューロマンサー』(Neuromancer)は1986年に邦訳が出ている。
 時期を同じくして、このような作品が日本でも生まれていたことは、特筆に値する。
 士郎正宗氏の緻密な絵は、大友克洋氏の流れをくむ作風だが、マイナーな出版社だった青心社(※)からデビューしたこともあって、マニアックなファンが好む作品だった。
 当時を知るファンとしては、攻殻がこれほど息長く、大化けする作品になるとは思わなかった。アニメ映画版の攻殻が、ハリウッド映画の『マトリックス』に影響を与えたことは有名な話。

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊
田中敦子
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2011-04-22



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 攻殻には近未来のさまざまなギミックが登場する。
 そのひとつが「光学迷彩」だ。
 それをリアルに作ってしまったという記事。

光学迷彩を実現、稲見教授 「攻殻機動隊」が教養本だった研究室 – withnews(ウィズニュース)

 自分の後ろ側の景色が投影されるマントをつけると、姿が消えてしまうように見える「光学迷彩」。慶応大学大学院の稲見昌彦教授が開発したこの技術は、士郎正宗さんが1989年に発表したSF漫画「攻殻機動隊」に出てきます。スターウォーズやスタートレックなどのSF作品が、研究者にインスピレーションを与えることは少なくありません。稲見教授は「ポップカルチャーとテクノロジーの距離は、どんどん近づいている」と話します。

(中略)

 稲見教授は「SF作品は、頭の中の考えを研究室内外の相手に分かりやすく伝えるためのツールにもなります」と言います。 例えば「ガンダムでいうと○○みたいな感じ」という言い方をすれば、詳しい背景の説明をせずにメッセージを伝えられます。そして、日本生まれのフィクションはいま、研究者にインスピレーションを与えたり、一般の人に研究成果を説明したりするツールとしてどんどん浸透しています。

 以前はスターウォーズやスタートレックなどハリウッド映画が目立ちましたが、最近では、アジアなら「ドラえもん」、アメリカやフランスでは「攻殻機動隊」のテクノロジーが共通言語として通用するそうです。

 SF的な設定としては、理にかなったものではあったが、それに近いものを実際に作ってしまったのがすごい!
 攻殻のように、完全に溶けこんでしまうわけではないが、基本技術としてはかなりいい線いっていると思う。
 これは応用できるだろうね。
 まっ先に飛びつきそうなのが、軍事関係なのではと思う。敵から身を隠す方法として、迷彩服があるが、森なら森の、砂漠なら砂漠の迷彩服を着る必要があり、オールラウンドで通用するものではなかった。

 アメリカ軍が開発を行っているものは「透明スーツ」と呼ばれている。

米陸軍、1年半以内の「透明スーツ」開発を目指す ≪ WIRED.jp

米陸軍は、戦場で兵士を見えなくするスーツを1年半以内に開発したいと考えている。カナダのHyperStealth Biotechnology社など一部の企業はすでに、米陸軍が求める条件をもう少しで満たせるところだと主張している。

 この記事中に、現在の迷彩服で風景に溶けこんでいる人物の写真がある。見事にカモフラージュしているのだが、この手の迷彩服は、その環境でのみ有効となる手段だ。
 攻殻の光学迷彩は、体を包むように力場を展開して透過する光を回折させるが、この方法だと光学迷彩の装着者にも周囲の風景が見えなくなる。そのへん、攻殻でも明確ではなかったと思う。
 稲見教授の光学迷彩は、カモフラージュ度としてはまだまだだが、場所を選ばない利点がある。人間だと動きによって形が変化するので、迷彩効果にムラが生じそうだが、車両などの形の変化しないものであれば、もっと効果的なのではと思った。
 いずれにしても、面白い技術だ。

 また、「アメリカやフランスでは「攻殻機動隊」のテクノロジーが共通言語として通用する」というのも面白い。
 そこまで浸透しているのかと。おそらくアニメ版の攻殻だろうが、実現可能な未来のビジョンとして概念的・映像的に説得力はあるからね。
 物語中の時代設定は2029年以降なのだが、あの世界が実現するには、15~20年では無理そうだ。基礎技術として発展しそうなものは現在にもあるが、実用的かつ汎用的なものとなるには、少なくとも50年はかかる気がする。

 スマホの画面を指でタッチしてピコピコやってるのは、進んでいるようでじつにローテクだ(^^)。入力・操作するのに、機械に合わせて人間が通訳しているようなものだからね。
 脳とコンピュータが直結できるようになったら、真の意味で「電脳」だ。その時代のコンピュータは、量子コンピュータだろうけどね。

(※)余談だが、青心社が発行していたコミック誌「コミックガイア」に、拙作のマンカが1本(PNは別名義)掲載されたことがある(^_^)。サイバーパンクな作品だった。当時はパソコン通信全盛の時代で、ネットはマニアの世界。パソコンは非力で、CGはまだ黎明期。デジタルコピー機が出始めの頃で、それを使ってオリジナルの電脳的スクリーントーンを自作して、作品に使ってたんだよね。懐かしい思い出。

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