日本の歴史家の団体が、慰安婦に関する声明を発表した。
その声明を援護射撃にして、韓国は歴史問題で攻勢にでている。

日本の歴史学者6900人「慰安婦強制連行を認めるべき」(2) | Joongang Ilbo | 中央日報

韓国外交部の当局者はこの日、「その間、我々が慰安婦問題を提起すれば安倍晋三首相は『慰安婦など歴史問題に関する議論は歴史家に任せるべき』という話を繰り返してきた」とし「日本歴史学者の総意が反映されたこの日の声明を通じて、日本政府が慰安婦問題を直視することを期待する」と述べた。

その声明の原本はどこにあるのか、リンクくらい張っておいて欲しいものだが。
ググって探した。

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 – 東京歴史科学研究会

 『朝日新聞』による2014年8月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる。われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。

第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、当該記事やそのもととなった吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである。

第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている。たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。

第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。

日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、それは日本が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。今求められているのは、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、過ちをくり返さない姿勢である。

当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。

2015年5月25日

歴史学関係16団体
日本歴史学協会
大阪歴史学会
九州歴史科学研究会
専修大学歴史学会
総合女性史学会
朝鮮史研究会幹事会
東京学芸大学史学会
東京歴史科学研究会
名古屋歴史科学研究会
日本史研究会
日本史攷究会
日本思想史研究会(京都)
福島大学史学会
歴史科学協議会
歴史学研究会
歴史教育者協議会

全文引用。部分だけでは全容がわからないと思うので。

安倍首相の肩を持つわけでもないが、首相は「河野談話」や「村山談話」を継承するといってるよね。つまり、否定はしてないわけじゃない?
今度出す安倍談話にどういう文言を入れるかが注目されているが、過去の談話を継承するのだから、直接的な言及がないにしても、全否定することにはならないと思うのだが?

上記の歴史学会の声明に足りないこと。

(1)歴史的事実とする資料の提示がない。

声明文の中に書ききれないであろう資料は、リンク先を明示するか、別紙資料を用意した方がいいのでは?
強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。」という資料は、研究者達にしか目にできないもので、私たちが見て、読んで確かめることができない。この一文だけでは、真偽を判断する材料にはならず、説得力が乏しい。

(2)人数の明示がない。

慰安婦がいたことを否定する人はいないと思う。それは日本だけのことではなく、韓国が米軍のために用意した慰安婦もいたのだし、ベトナム戦争で韓国がベトナム人を慰安婦にしたことからも、過去の戦争には付随したものだったともいえる。

問題はその規模。
韓国は20万人などという、信じがたい数字を挙げているが、70年前の時代に短期間で20万人を輸送するのは不可能なくらい大変なことだったのではないか? 交通機関の発達した現代ですら、20万人を輸送するのに、どれほどの船舶・飛行機が必要か、コストはべらぼうにかかる。

戦時中、兵員を輸送する船舶は、民間の船を転用することが多かったようだが、一度に運べる人数は、500~1,000人くらいだったようだ。船の大きさにもよるが、定員超過で4,500人くらいが限度だったとか。戦艦大和の定員ですら、最大3,332人。

仮に船で3,000人を一度に運ぶとしても、延べ134往復も、戦地とのあいだを行き来しなくてはいけない。軍事行動として兵士を運ぶだけでも大変なのに、慰安婦を運ぶことに艦船を割り振るのは、割に合わない気がする。陸路であれば、もっと少ない人数しか運べない。

韓国が執拗に慰安婦を問題にする一因は、20万人という数字にある。

歴史家として事実の究明を真義とするのなら、実際の慰安婦が何人だったのかの解明もしてほしい。20万人もいたのなら、名乗り出た生存者や身内の親兄弟子供が少なすぎる。親2人、兄弟2人、子供2人いるとしたら、関係者は120万人いることになる。しかし、本人あるいは親族が慰安婦だったと名乗り出た人は200人あまりしかいないのはなぜ?

生存率は25%ほどだったとされているので、200人の母数は800人になる。逆に、20万人の25%は5万人である。このギャップはどういうわけ?

これについては、興味深いブログがあった。

慰安婦20万人説は大ウソ! : 在日朝鮮人から見た韓国の新聞

慰安婦が満17歳以上という条件で募集されていましたが、
アメリカの調査でも分かっている通り、実際、在職者年齢は19歳以上でした。
また調査の結果、慰安婦の中心年齢は20代前半でした。

ここから計算です。

1920年の朝鮮半島の人口が1691万人。
1930年の朝鮮半島の人口は1968万人。
この10年間で277万人が増えていますので、1945年時点で20代前半の人口は半分の138.5万人。
男女比はおよそ105:100なので、1945年に20歳代前半になっていたであろう女性の人口は67.6万人であったと推計されます。

慰安婦の数が20万人とされていますから、この世代の実に30%もの女性が慰安婦になった事になります。
また、生存率が25%という数字を良く見かけますが、これが本当なら、
戦後、20代前半の女性の人口は52.5万人まで減少していたことになります。

(中略)

さぁ、慰安婦として30%も連行され、
生存率25%という過酷な試練の結果、
この世代の女性が67.6万人から52.5万人と出産人口が22%も減った結果!

人口のくぼみができていませんでした。
(60~64歳のところの人口が大きく減っているはず)

通常の戦争であってもその痕跡が残りますが、
強制連行された結果、出産人口が22%減というのは、
それ以上、くっきりとした大きな痕跡を残さないのはおかしいのです。

現実的に考えて、一度に連れて行ける慰安婦の人数は、数十人ではないかと思う。それも兵員や武器・食料などと一緒に運んだはずだ。
図録▽アジア各地における終戦時日本軍の兵数
によると、陸軍=296万3300人、海軍=38万1800人というデータがあるが、20万人というのは、海軍の兵力に匹敵する数字だ。
慰安所の数は、一説には400カ所というのがあるが……

慰安所と慰安婦の数 慰安婦問題とアジア女性基金

昭和17年(1942年)9月3日の陸軍省恩賞課長の報告では、「将校以下の慰安施設を次の通り作りたり。北支100ヶ、中支140、南支40、南方100、南海10、樺太10、計400ヶ所」とあります。

この報告書が本物だとしても、本当のことを報告しているとはいえない。大本営発表にもあるように、虚偽の戦果を発表したり、成果を出したように嘘の報告をすることは、多かったと思われるからだ。その点、当時の軍隊は指揮系統が腐っていたとはいえる。

慰安婦は存在していたし、強制性もあったことは事実だろう。
それを否定しているわけではない。

当時は、日本人にすら「自由」はなかった。赤紙で強制的に徴兵されていたのだし、軍や政府を批判すると非国民として問答無用で逮捕されるような時代だ。
現代のような自由も人権もなかった。人権を尊重されなかったのは、慰安婦だけではなかった。

歴史を直視するには、慰安婦の人数も実態に近い数字を割り出す必要があるように思う。
1000人よりは多いだろうけど、1万人よりは少ないかもしれない。しかし、20万人は疑問符だ。また、前述の「 慰安婦問題とアジア女性基金」のデータによれば、日本人慰安婦が20.4%いたことになっているが、そのことはほとんど話題になっていない。

(3)批判する自由もある。

マスコミの報道は、センセーショナルに細部を省いて煽ることが多いのも事実。その報じ方に問題があるとは思う。裏を返せば、マスコミはそういうものだともいえる。
脅迫や不当な攻撃は犯罪であり、「学問の自由」への侵害というのはわかる。

しかし、学問の自由があると同時に、その論文や論説に対して批判や異議を唱える自由もある。ときに、辛辣な批判は、批判を受ける人にとっては不快なこともあるだろう。不快だから、学問の自由への侵害だというのであれば、自由のはき違えだ。
批判に対しては、論理的な反論で答えるのが学問だ。

この声明文では、批判に対する不満しか書かれておらず、いささか感情的に読み取れる。「自分たちが正しい」という信念は感じられるが、論理的な反証にはなっていない。

(4)過去の戦争犯罪を、現代の倫理観や法律では裁けない。

現代の倫理観や法律からいえば、戦時中の慰安婦は人権侵害であり、女性や国籍の差別であり、国家的な犯罪だといえる。

しかし、当時は現代ほど成熟した社会ではなかったことも事実。戦争のために、男も女も、兵士も民間人も、命の価値は著しく低かった。国を問わず、アジアだけでなくヨーロッパでも、数万人~数十万人が無慈悲に殺されていた。
戦後生まれの私がいっても説得力は乏しいが、そういう時代だったんだ。

(5)慰安婦問題を取り上げるのなら、日本だけでなく韓国やアメリカの慰安婦問題も併記しなければフェアではない。

韓国は「韓国兵専用の慰安所」を直視できるか?」でも書いたことだが、慰安婦がいたのは日本だけではない。ベトナム戦争時の韓国軍の慰安婦の方が、時代は新しい。

ベトナム戦争は1960年からだから、太平洋戦争の終結した1945年から15年後だ。1945年当時より、自由や平等がより尊ばれるようになった時代に、韓国軍のやっていたことの方が、人権問題としては大きいのではないか?
1970年代初頭には、ベトナム反戦運動と連動してウーマンリブ運動が起こっていた時期だ。

声明の矛先が、日本政府だけに向けられているのは、学者としての論理性に欠ける。過去の戦争の人権問題について批判するのであれば、日本だけを問題にするのは、それこそ歪曲と偏向だろう。

韓国軍慰安婦の方が、時代も新しく、記録もより正確に残っている。

韓国軍慰安婦 – Wikipedia

ベトナム戦争末期にはベトナムでは30万人から50万人の慰安婦がいた(Cynthia Enloeによる[51][52])[15]。アメリカ陸軍第1師団第3旅団(将兵4000名)ではベトナム女性60人が住み込みで相手した[15]。
1980年代までに100万人超の韓国女性が米軍の相手をした

この数字がどれだけ実態に近いかは疑問だが、日本軍慰安婦が20万人だとしても、それよりもはるかに多い。問題にするのなら、ベトナム戦争時の方が深刻だと思うのだが?
なぜ、それは不問なのだ?

(6)1945年以降、日本は過ちを起こしていない。

声明の末尾に……
「過ちをくり返さない姿勢」
……とあるが、大事なことを忘れていないだろうか?

日本は敗戦後(1945年以降)、他国と戦争はしていないのだ。長い間、戦争をしていない、他国を傷つけていない、数少ない国のひとつなんだ。
先進国の中で、唯一、「過ちをくり返さない姿勢」を保ってきた国だ。

安倍首相の発言や行動が、隣国から批判されるが、自衛隊という武力を持ちながらも、武力を行使してこなかったのは、「過ちをくり返さない姿勢」があるとこの証左とはいえないだろうか?

日本が右傾化していると隣国はいうのだが、核兵器を保有している中国にはいわれたくないし、反日カードを内政や外交の切り札に使う韓国にもいわれたくない。
安倍が「右」だというのなら、韓国や中国はもっと「右」だろうと思う。

安倍政権を批判・攻撃することは、「右」に向かうことを助長する。

韓国や中国は、ここぞとばかりに歴史問題で安倍政権を攻撃(口撃)するが、それはかえって安倍政権や国民感情を「右」に向かわせているように思う。
いわば、炎上商法のような感じになっている。

隣国が口撃すればするほど、安倍政権にとっては大義名分が立ってしまう。友好的ではない隣国の対応を、「脅威」と捉えることができるからだ。

それでも、政権批判が堂々とできる日本は、まだ平和だし民主的で、言論の自由がある。
それが救いだ。

隣国では、親日的な発言は御法度で、非国民扱いされてしまうじゃないか。右向け右で、一斉に右を向いてしまうのは、隣国の方ではないだろうか?
少なくとも、日本は独裁政治ではないし、野党が頼りないとはいっても、民主的に政権交代が可能な国なんだ。ただ、民主党政権時代に大きな失望してしまったために、野党の政権よりも自民党の方がマシという状況に陥っている。

私は、歴史的真相を知りたいのだ。
どっちかの肩を持つわけではない。
戦時中の日本軍には、朝鮮籍の兵士も多くいた。軍人軍属が24万人あまりいたという。

戦地に慰安婦がいたのなら、朝鮮籍の兵士たちも同胞と知りつつ利用したのではないか? そういう話が出てこないのは、不自然な気がする。
特に、人数は重要だ。慰安婦が1000人だったというのと、20万人だったというのでは、歴史的なインパクトはまったく異なる。歴史的な悲惨さを語るとき、犠牲者の数がどれだけあったかが、重要なファクターになっているからだ。

第二次大戦時の日本軍慰安婦だけでなく、朝鮮戦争、ベトナム戦争までひっくるめて、慰安婦問題は語られるべきだと思う。
それこそが、「歴史を直視する」ことではないか?

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