ダイヤモンドの作り方

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宝石のひとつである「ダイヤモンド」

その組成は、化学的にはただの炭素である。焼きすぎた魚の焦げ、あるいは炭火の炭、もっといえば人の呼気に含まれる二酸化炭素など、炭素はありふれたものだ。
炭素原子が整列して共有結合し、幾何的に理想的な角度でまったく歪みがない結晶構造になったものだ。

しかし、宝石としてのダイヤモンドは、小さくても高価な価値を持つ。
たとえば、5.03カラットで3600万円だという。

本日の大喜利会場はこちらです ダイヤモンド(3600万円)のAmazonレビューでおまいらのボケが光輝く – ねとらぼ

 Amazonで取扱中(5月14日現在)の「ダイヤモンド・ルース(裸石)5.03カラット」。本物の大型ダイヤで、お値段3600万円という「ジュエリー」カテゴリーでも最高額の商品なのですが、なぜか14日時点で25件を超えるカスタマーレビューが投稿されています。

5.03カラットは、1.004グラムだ。たかだか1グラムで3600万円とは!
原料の炭素は、腐るほどある。(注:炭素は腐らないが、ものの例え)
要は、炭素原子の並び方なのだ。歯並びの悪い美人より、歯並びのいい美人の方が、より美人に見えるのと同じだ。(注:厳密には同じではないが)
その違いが、魚の焦げか宝石かの違いを生む。

ダイヤモンドを作るのは、さほど難しくない。
材料と道具さえそろえればいいのだ。

(1)材料を集める

前述したように、ダイヤモンドの原料は炭素だ。
つまり、炭素を含むものであれば、なんでも材料になる。
馬の糞を集めてもいいのだが、今日では牧場にでもいかないと馬の糞は収集困難なので、近所のスーパーで調達できるものにする。

近所のスーパーといえば、真っ先に思い浮かぶのは食材だろう。
食材にも炭素は含まれている。そもそも生命体の基本元素として、炭素は不可欠だからだ。
肉でも魚でも野菜でもいいのだが、ここはヘルシー志向ということで野菜にしよう。

100gの野菜の成分は、75gが水分、1.5gがミネラル分……カリ(K)、カルシウム(Ca、石灰)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、硫黄(S)、 塩素(Cl)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)など…で、残り23.5gが炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)となっている。
炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)の比率は植物によって異なるが、おおよそ「46:46:6.5:1.5」となっている。つまり、炭素は100gの野菜から10.8gほど取り出すことができる。
その10.8gの炭素をダイヤモンド化すれば、50カラットのダイヤモンドにできる。
それがいくらの価値になるか……ウハウハである(笑)。

野菜ならなんでもいいのだが、栄養素が豊富な根野菜が適しているだろう。いわゆるイモ類だ。イモは植物の栄養素を蓄えているので、炭素も豊富に含まれている。
……ということで、ジャガイモを用意する。量は、ロスを見込んで、多めに500gにしておこう。

▼ジャガイモ500g

ジャガイモ500g

ジャガイモ500g


(2)材料を加工する

ジャガイモをそのまま使うことはできない。後述するが、機器に投入するのにジャガイモの形のままでは不都合だからだ。
まず、フードプロセッサーやミキサーにかけて、ペースト状にする。
家庭にあるフードプロセッサーで十分だ。

 

ペースト状になったら、余分な水分を飛ばすために、フライパンで火にかけるか、天日干しする。時間を節約したいのなら、電子レンジを使ってもよい。
粉末状になるまで水分を飛ばす。

そんな面倒なことをしなくても、小麦粉を使えばいいじゃん……という人もいるだろうが、これは作る過程を楽しむためだ。手間暇をかけて、ジャガイモから作ることに意義がある。

(3)機器を用意する

炭素をダイヤモンド化するには、そのための機器が必要だ。
ここからがちょっとやっかいである。

その機器とは「特異点ジェネレーター」だ。

容易には入手できないので、特異点ジェネレーターを備えた機器を探す。
代表的なものとしてはワープエンジンだが、国家予算並みの価格なので、個人で購入するのは現実的に不可能だ。中古の宇宙船を探すという手もあるが、それでも都心に豪邸を建てるくらいの金額になってしまう。しかも、出回っている中古船は廃船寸前のものが多く、ワープエンジンは年式が古いので使いものにならないことが少なくない。なので、あまりおすすめできない。

比較的手に入れやすいのは、数世代前の自走式粒子ビーム砲だ。
粒子ビーム砲の動力源として、マイクロ特異点ジェネレーターが使われており、出力は小さいがダイヤモンドを生成するには十分すぎるだけのパワーがある。

ただし、ここでひとつ問題がある。
粒子ビーム砲は、地球からは購入できないということだ。未開文明不干渉法によって、現時点で惑星連邦に加盟していないこの時代の地球は、より高度な文明のテクノロジー製品を売買できないのだ。

だが、抜け道はある。
直接は買えないが、仲介者を通せば入手できる。
仲介者とは、フェレンギの商人だ。彼らは少々違法なことでも、金さえ出せば売ってくれる。

武器としての粒子ビーム砲ではいくつかの法に抵触するが、武器としての機能を外して、スクラップとして購入する。もちろん、特異点ジェネレーターを残したままだ。特異点ジェネレーター単体では、ほとんど使い道はないので、粗大ゴミとして捨てられるだけなのだ。

市場に手回っている粒子ビーム砲はロミュラン製が多いが、新品は手が出ないのでスクラップ品を買う。欲しいのは特異点ジェネレーターなので、武器として使える必要はないからだ。

スクラップ品で、だいたい1000ラチナム・コイン必要だが、私たちがラチナム・コインを入手することは難しい。地球の通貨はフェレンギ人には無価値なので、彼らが価値を認めるもので物々交換することになる。

彼らがなにを欲しがったかというと……
『超時空要塞マクロスF』のBlu-rayだ。厳密にいうと、3Dホログラム化したコンテンツなのだが、知人のロミュラン人に頼んで、Blu-rayから3Dホログラムにコンバートしてもらった。それなりの対価を払って。
デ・カルチャー……なのかどうかはともかく、マクロスFは文化的破壊力があるらしい。ホロデッキのコンテンツとして利用すれば、ボロ儲けできるというわけだ。


ともあれ、粒子ビーム砲のスクラップを手に入れた。
そのとき、忘れちゃいけないのが、空の燃料ペレットケースをもらうこと。このくらいはフェレンギ人でもサービスしてくれる。空の燃料ペレットケースは、特異点ジェネレーターにエネルギーを注入するためのものだ。

▼転送でわが家に送ってもらった、自走式粒子ビーム砲。意外と小さいが、部屋が埋まってしまった。

自走式粒子ビーム砲

自走式粒子ビーム砲

(4)材料を特異点ジェネレーターに投入する

さて、いよいよダイヤモンドを生成する。
(2)で作ったジャガイモの粉末を、空の燃料ペレットケースに封入する。そのペレットを、粒子ビーム砲の燃料ペレット挿入口より投入。

▼材料を封入したペレットケース。

ペレット

ペレット

掃除機で吸い込まれるように、ペレットはジェネレーター内部に入っていく。
ジェネレーターの中心には特異点があり、ペレットが臨界点(事象の地平線)に近づくと、高重力がかかると同時に地球の中心核なみの高熱を発する。

特異点が部屋の中にあると、なんでも吸い込まれてしまうような誤解をする人がいるが、ジェネレーターはシールドで保護されており、なおかつ特異点は微小なものなので、数メートルも離れれば重力の影響はほとんどない。重力は距離の二乗に反比例して減衰するからだ。

燃料を投入するときには、特異点の中心に向かって投入する。質量をエネルギーに変換するためだ。自走式粒子ビーム砲のマイクロ特異点ジェネレーターに使われているマイクロブラックホールは、蒸発するのが早く、質量を定期的に補充しないと消滅してしまう。早いといっても、数十年単位の話だが。

しかし今回は、材料に高重力、高熱を加えることが目的なので、軌道を少しずらして投入する。そうしないと、生成したダイヤモンドを回収できない。
材料を詰めたペレットケースが、特異点の間際を周回して、戻ってくるように軌道を設定する。

それにかかる時間は、ほんのわずか……なのだが、特異点の重力によって時間が遅延するため、投入から回収までに数時間はかかる。ペレットケースはエキゾチック物質で作られており、100Gの重力、3万度の温度に耐えられる。太陽に放りこんでも大丈夫というのが特長だ。
戻ってくるまで、お茶でも飲みながら、じっくり待つとしよう。

(5)ペレットケースを回収

ペレットケースを回収したら、十分に冷めるまで待つ。
冷めたら、中身を出してみる。
粉だったものの中に、結晶化した炭素が入っている。

▼これがダイヤモンドだ!(笑)

八面体結晶

八面体結晶


ダイヤモンドというと、宝石としてカットした姿を連想するだろうが、本来の結晶は八面体なのだ。
これを売れば、特異点ジェネレーターを手に入れるために投じた資金を回収できて、なおかつ大きな利益を生むことだろう。

余談ながら加えておくと、ダイヤモンドが高価な価値を持つのは、地球だけである。作るのが容易なので、他の惑星連邦諸国では安価な資源のひとつにすぎない。地球でいえば、窓ガラスのガラス程度の価値だ。

また、大量に作って大量に売らないこと。希少価値がなくなれば、価格は暴落してしまう。
注意してほしい。

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