“第6の大量絶滅”が起こっても、進化の歴史は続く

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環境問題や地球温暖化問題は、なんとかしなくてはいけないと、政治的、経済的、産業的なテーマにされている。

温暖化については、肯定派科学者が大勢で、地球の平均気温は年々上がっていくという。
少数派である懐疑派科学者は、温暖化ではなく、今後は寒冷化に向かうと唱える人もいる。

それぞれに言い分があり、どの「説」が正しいのかは、現時点ではわからない。いずれにしても、数百年先~数千年先の予測だ。未来の予測ほど難しいことはない。

温暖化対策のために原発は必要だというのは、たぶんに打算的な発想だろう。極論すれば、二酸化炭素の排出と核廃棄物の排出の、どっちがいいか?…という選択でもある。二酸化炭素排出権の取引などは、経済的な思惑が強く働いている。

著しい経済成長を続けながら、温暖化問題を解決しよう…などというのは、喫煙を続けながら肺がんを予防しよう、というようなものだ。

実態としては、儲かるのはどっちか?…になっている。
太陽光や風力といった再生可能エネルギーの方が、原発や火力発電より「儲かる」ということになれば、流れは変わる。こういうことには「利権」がつきまとうものだが、現時点では再生可能エネルギーの利権よりも原発の利権の方が魅力的なのだろう。理想論だけでは世の中はなかなか動かず、理想と欲が結びつくことで動き始める。

人間の活動により、環境が激変し、生物の生息環境が影響を受け、絶滅する種が増えている。

地球が危ない!
なんとかしなくては!

そこで、環境保護や環境に優しい製品が望まれる。
それはそれでいいことではある。住みやすい環境であるに越したことはない。
しかし、

人間が招いた環境破壊だから、人間が地球環境を守り、維持しなくてはならない。

……というような論理には、人間の傲慢さがあるようにも思う。
温暖化が進むと、生物の大量絶滅を招くと説く記事が以下。

ニュース – 環境 – “第6の大量絶滅”は回避できるのか – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)

 エリザベス・コルバート(Elizabeth Kolbert)氏は世界各地を旅して書き上げた新刊『The Sixth Extinction: An Unnatural History(第6の絶滅:不自然な歴史)』の中で、われわれの目の前で起きようとしている大量絶滅の前兆について述べている。地球が誕生してから同様の危機が5度訪れているが、今回の危機はこれまでとは異なるという。今回の危機はわれわれ人間によって引き起こされようとしているのだ。

おっしゃることはもっともなのだが、人間の果たす役割を、まるで神のごとく扱っているように思える。深読みしすぎかもしれないが、人間は「特別」なのだという意識が垣間見える。

絶滅に瀕した種を保存しようと尽力している活動を否定するわけではない。だが、どんな種でも、いずれは滅びる。生きた化石といわれるシーラカンス(約5億4200万~約2億5100万年前の古生代から生き残っている)のような例外もあるが、ほとんどの種は数万年~数百万年で種が途絶えるか、別の種に進化している。

直近で絶滅認定された「ニホンカワウソ」は、カワウソの亜種だが、イタチ科に属する。イタチ科の祖先とされる種は、約3300万年前に登場し、その後、アライグマ科やレッサーパンダ科に分岐している。古代の日本に定着したカワウソが、環境に適応してニホンカワウソになったわけで、起源をどこまで遡るかにもよるが、数十万年~数百万年ほどの生存期間を経て、近年絶滅してしまったと考えられる。

ニホンカワウソは江戸時代には食用にされていたそうだが、絶滅の原因が人間の乱獲であるにしても、数千万年の末に絶滅したわけで、数百年しか種が存在しなかったわけではない。近年になって絶滅したと聞くと、わずかな期間しか存在していなかったような勘違いをしてしまうが、そうではない。

進化の歴史は、絶滅と新たな種の出現の繰り返しだ。
どんな種でも、いずれは絶滅する。その絶滅を、人間が早めてしまった罪はあるものの、考古学的なスケールでいえば、わずか数万年の誤差でしかない。地球が誕生してからの歴史は、45億年あるんだ。

たとえ、“第6の大量絶滅”が起こって、人類を含めた大部分の生物が絶滅しても、生き残る種は少なからずいる。それは過去の大量絶滅が証明している。完膚無きまでに生物が根絶されるのは、太陽が燃え尽き、地球そのものが滅びるときだ。

1万年以内に、“第6の大量絶滅”が起こると仮定しよう。
人類は滅び、文明も消失する。しかし、わずかに生き残った生物が、新たな進化を始める。それはゴキブリかもしれないし、手塚治虫の「鳥人大系」のように、鳥かもしれない。

鳥人大系 (手塚治虫文庫全集)
手塚 治虫
講談社
2011-08-12



新たな進化を始めた生物が、やがて人類のように知的生命体になる可能性もある。
人類は、恐竜が絶滅したあとに進化を遂げた種だ。恐竜が地上を闊歩していたとき、地べたで這いずり回っていたネズミ(齧歯類)が、人間に進化するなんて、誰が想像できただろうか?

その進化に要した時間は、約6500万年。
“第6の大量絶滅”ののちでも、進化の歴史をやり直す時間は十二分に残されている。
地球で生物が生存できる残りの寿命は、10億年~26億年だという。

「地球生命の寿命」13億年延びる?:「熱くなる太陽」と地球の気圧 ≪ WIRED.jp

太陽が高温になっていく結果、10億年後には地球生命が存在不可能になると言われている。だがこのほど、26億年後まで大丈夫という説が発表された。惑星の気温制御には気圧が影響し、気圧変動には生物の活動が影響するという壮大な説を紹介する。

6500万年で、ネズミが人間にまで進化できるのだから、大量絶滅があと10回あっても、次なる種が人間並みに進化できるチャンスはある。

そういう宇宙的な時間スケールで考えれば、地球温暖化なんてほんの一瞬の出来事にすぎない。そもそも、地球の過去の歴史の中では、今以上に温暖だった時期もあった。地球は温暖な時期と寒冷な氷河期を繰り返していて、現在は比較的温暖な間氷期にあるといわれる。高緯度地方や高い山脈地帯に氷河が残っていることからもわかるように、現在は氷河期の時期にあたる。氷河期は、4万年~10万年周期で寒暖を繰り返していて、人類が文明を築いたこの1万年ほどは、温かい時期だったことが幸いしている。

地球温暖化が大変だ……と、大騒ぎしているが、困るのは人間自身であって、地球は痛くも痒くもない。地球を擬人化しても意味はないが、地球の一生(55億年~71億年)のうち、人類の文明が存在するのは、せいぜい1万年。わずか0.00018%以下にすぎない。

人類が地球の支配者として、この先、何百万年~何億年も君臨できると思うのは、いささか傲慢の度を超している。心配しなくても、数万年もすれば滅びてしまうだろう。それが自滅なのか、淘汰なのかはともかく、100万年後も人類文明が存在している可能性は低い。

人類文明が滅びれば、環境問題はきれいさっぱり解決する。
地球の生物は、進化の歴史を再開するだけなんだ。

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