鉛筆がペンタブレットよりも優れているわけ

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 最近、鉛筆を使う機会が減った。
 私は絵も描くので、鉛筆とスケッチブックは欠かせないものだった。
 しかし、CG(2D & 3D)で絵を描くようになって、鉛筆を使わなくなった。
 それでも、絵を描くには鉛筆の方が優れていると思う。

ペンはまだタブレットよりも強し──老舗筆記具メーカーはフル生産中 – ITmedia ニュース

 コンピュータやタブレットやスマートフォンはまだペンや鉛筆を駆逐するまでには至っていない――。そう語るのは、高級筆記具メーカーの独Faber-Castellだ。

 CGで絵を描くときは、ペンタブレットを使う。
 タブレットというと、最近ではiPadのような端末を指すことが普通になったが、お絵かき用のタブレットは、電子ペンを使い、筆圧感知できるタブレット状の描画エリアから入力する。
 以前は、タブレットといえば、お絵かき用の入力装置を意味していたが、紛らわしいのでここではペンタブレットと呼ぶ。

 ペンタブレットを使うのは、直接、CGとして描いていけるからだ。鉛筆で紙に描いたものをスキャンするという手もあるが、最終的に画像データにする場合には手間がかかる。
 初期の頃は、お絵かきソフトが貧弱だったため、ペンタブレットを使うと思い通りのものが描けなかった。その後、ペンタブレットの性能が上がり、ソフトも向上してきて、紙に描いたものに近いものが再現できるようになった。
 そうなってくると、ペンタブレットを使う方が効率が良くなる。
 紙に描く場合は、一発勝負でやり直しがきかない。
 たとえば、水彩画であれば、絵の具を水に溶いて、筆でささっと塗っていくわけだが、絵の具の広がり具合や色調の加減は、一度塗ったらやり直しができない。「しまった」と思ったらあとの祭り。途中までいい感じになっていても、最後でミスったら元の木阿弥だ。何度となく、そういう失敗はしたものだ。
 だが、画面上で水彩画をシミュレートする描画をすれば、何度でもやり直しができる。いろいろと試すこともできるし、色調の違うバージョンをいくつでも作れる。水彩を消しゴムで消すこともできる。しかも、できあがった絵は、本物の水彩画と区別が難しいくらいのものになる。
 私が使っているソフトは、「Painter」だ。
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 Painterの初期バージョンは、使える描画モードと使えない描画モードがあったが、バージョンを重ねるほどに使えるものが多くなった。
 鉛筆画、水彩画、パステル画、油絵……など、ほとんどの絵のスタイルをシミュレートできるし、その再現性も高い。
 とはいえ、どうしてもかなわない部分がある。
 それはペンタブレットの感触だ。
 鉛筆には鉛筆の感触がある。画用紙に描くときには、鉛筆の芯が紙の上で削れていって、先が丸くなり、ときには横に倒して側面で描いたりもする。その紙と鉛筆の摩擦の感触が、絵を描くときの感触になるのだが、ペンタブレットにはそれがない。
 ペンタブレットは、常に硬いペンと硬いボードだ。鉛筆がかすれるときの感触がないので、それはディスプレイを見ながら、脳内で指の感触をシミュレートしながらかすれたタッチにする。それはそれで慣れの問題なのだが、鉛筆と紙にはかなわない部分だ。
 言い換えると、アナログとデジタルの埋められない溝だ。
 その溝も、技術的には埋められる気がする。紙に鉛筆で描いたものが、そのまま入力データとなるような方法だ。
 ひとつの方法として、スキャナは描き上げたあとにデータ化する方法だが、リアルタイムに描いている段階からスキャニングするような方法も可能だろう。
 あるいは、画材の感触を指にフィードバックできるようなペン。物理的な感触を再現する基本技術はあるので、いずれはそういうデジタル画材も出てくるかもしれない。

 デジタルで絵を描くことが多くなったから、もっとこういうのができるといい……と欲が出てくる。
 なんだかんだといって、現状では鉛筆に勝る画材というのはないんだよね。
 久しぶりに鉛筆で絵を描いてみようかな。

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