ハフィントン・ポスト日本版で連想したこと


 ハフィントン・ポスト日本版がオープンした。
 とはいっても、「ハフィントン・ポストってなに?」……という人が多いはず。
 一部のネットメディアで話題になっているものの、一般的な認知度は低いと思う。うちの彼女だって、パソコン歴・ネット歴は長いが、「しらな~い」という部類だ。

 関連する記事をいろいろと読んでみたが、期待半分、失望半分という感じだ。
 ネット記事、ブログ記事を集約するサイトとしては、アゴラBLOGOSYahoo!ニュース個人などが先行してあるが、それらとの違い、差別化が課題のようだ。
 記事を書く著名人は限られていて、ハフポにも重複しているし、目新しさはあまりない。
 本家アメリカのハフポは、創業者の人脈をいかして周到な根回しをしたというが、日本版ではそこまで徹底していないようだ。
 特徴は、編集が介入する「コメント欄」らしいのだが、活発な議論、良質な議論が起こるだろうか?……と疑問符を感じる。

 現状、見た限りでは、他のブログ集約サイトとあまり変わらないし、コメント欄も普通だ。
 コメント欄に関しては、「日経ビジネスオンライン」の方が、建設的なコメントは多い。

 なんとなく「見切り発車」しているような印象。
 とりあえずスタートさせて、少しずつ充実させていく……ということなのだろう。それはそれでいいのかもしれないが、準備不足の感は否めない。
 で、連想したのが「楽天kobo」のスタート時のこと。
 かけ声高らかにスタートを切った楽天koboだったが、次々に問題が露呈し、不評を買いまくった。準備不足で日本の状況にローカライズされておらず、対応が後手後手に回った。
 ハフポが朝日新聞と提携しているというのも、英語圏のkoboを楽天が無理矢理持ってきたという状況に似ている。

 英語圏でハフポが成功しているのは、その文化的背景があるからだろう。それを日本に直輸入して、日本語化するだけではうまくはいかないことは想像できる。
 英語圏の文化的背景……つまり、議論することを好む文化的背景は、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による「白熱教室」を見るとわかる。
 DVDは以下に。
NHK DVD ハーバード白熱教室 DVD BOX [DVD]
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 著作は以下。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 [単行本]


 ある問題に対して、賛否の意見を論理的に主張し、議論する。
 つまり、ディベートだ。
 日本で行われた白熱教室は、あまり白熱しなかった。意見を言う人が少なかったことと、意見を述べる人が議論に不慣れだったからだ。自分の意見は誰しも持っているものだが、それを明確に説明し説得させるだけの論理的な発言をするのは容易ではない。それは普段からディベートをしていないことからくる。自己主張をするよりも、対立を恐れ、他者に迎合するか、沈黙することをよしとする、日本的な慣習があるからだ。
 「だめだ」とか「バカか」とか「反対だ」とは言えても、なぜだめなのか、なぜバカなのか、なぜ反対なのかを説明できない、あるいは説明しない。ではどうすればいいのか?…といった対案も出せない。議論を発展させるのではなく、議論を止めて拒絶するだけになってしまう。
 これは日本の国会にも当てはまる。
 議論とは、対立する意見を戦わせることだが、対立すること自体を忌避してしまうのが、日本的な思考ではないだろうか?
 だから、ディベートができない。

 ディベートの文化がない日本では、読者参加型のコメント欄の議論は、あまり「良質な議論」にはならないような気がする。
 Yahoo!ニュースのコメント欄は、短絡的な中傷があふれているし、コメントを書く人は左右どちらかに極端な人が多い。普通の人というか中立的な人は、そもそもコメントをあまり書かない。無視するか沈黙する。
 取捨選択しないコメントとしては、BLOGOSは比較的まともな方だが、それでも建設的な議論に発展することはまれだ。

 ハフポで議論が良い方向に活性化できるかどうかは、ディベート文化が日本に根付くかどうかのような気がする。
 そういう意味では、じつはものすごいことをやろうとしているのかもしれない。

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