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 居所不明の小中学生が全国に千人近くもいる。……という調査をもとに、親子関係の今と昔について、岩見隆夫氏がコラムを書いていた。

サンデー毎日: 居所不明の小中学生千人と「親」

 居所不明の小中学生が全国に千人近くもいる。文部科学省の調査でわかったそうだ。驚きである。それとも、こんな数字には、世間もあまりショックを受けなくなったのだろうか。

(中略)

 やはり親子関係がおかしい。親の子殺し、子の親殺しは論外だが、しかし、その背景にはうっすらとした親子不信が広がっているようにも思える。深刻なテーマだが、どうしたらいいのか、処方箋があるようで、ない。

 居所不明の小中学生が千人もいるのは異常だし不思議ではあるのだが、これが「今」突然起こっていることなのかどうかの追跡がされていない。
 文部科学省の過去記事を検索すると「居所不明児童生徒」が、

1999年が292人
 (中略)
2009年は333人
2010年は326人
2011年は1,191人(ここから多くなっているのは、調査方法の基準が変わったためで、東日本大震災が原因ではないということ)
2012年は976人

 ……ということになっている。
 ここでいう「居所不明児童生徒」とは、「文部科学省は、住民票を残したまま1年以上所在不明になり、就学が確認されない小・中学生をこう呼んでいます。」とのこと。
 つまり、就学していない子どもたちということであり、その数の子どもたちが「生きていない」ということではない。
 コラムでは子どもを殺した親のことが取り上げられているため、「居所不明の小中学生=死んでいる」と、誤解を招きそうだ。

 こういう記事を書くのであれば、過去からの「居所不明児童生徒」の推移をデータとして示すべきである。
 岩見氏が昔の親は愛情があった……という話を持ち出す以上、たとえ話に出てくる時代の「居所不明児童生徒」がどのくらいいたのかの根拠を示さないと、「二つの親子物語に登場するような父親、母親がいたころ、居所不明事件など起こるはずがなかった。」という結論は導き出されないと思う。

 昔話の時代は、終戦直後から昭和20~30年代くらいと想像できるが、終戦後の混乱期には「居所不明児童生徒」はもっと多かったような気がする。戦争で親を亡くした子どもは多かっただろうし、生き別れた人も多かったはずだ。
 そもそも「居所不明児童生徒」の調査自体が行われていなかったのではないか?
 探してみたのだが、古い時代の「居所不明児童生徒」のデータは見つけられなかった。データがあるのは平成11年度(1999年)からだ。

 この「居所不明児童生徒」の中身を精査しないと、この数をもって「親子不信が広がっている」とはいえない。
 岩見氏はジャーナリストなのだし、そこのところはもっと分析して欲しい。

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