雇用形態とモテ度の関係

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雇用形態とモテ度の関係

背景は、Jason GohによるPixabayからの画像

雇用形態の違い……正規雇用か非正規雇用かの違いで、異性の交際相手がいるかいないかの違いがあるのか?
ある統計データから、このことについて触れている記事があったが、これは統計データのミスリードだと思う。

20~30代男性非正規8割が恋人・配偶者・交際経験なし-承認と包摂の不在と脱原発デモの若者の成長(国家公務員一般労働組合) – BLOGOS(ブロゴス)

 内閣府の調査で、「恋人・配偶者がいない」「交際経験がない」の合計が、20代と30代の非正規労働者の男性で80%、正規労働者の男性で45%となっていて、同様に女性も52%と44%となっています。非正規雇用の広がりとともに、正規雇用でもブラック企業に代表されるように、若者の雇用が劣悪で不安定なものにされ、家族も形成できないという中で、「承認」と「包摂」の不在――「誰も認めてくれない」「どこにも居場所がない」――という感覚が若者の間に大きく広がっています。

この記事の元となっている統計データは、以下のことだろう。

内閣府ホームページ (2)交際について(PDFファイル/2011年 7月11日付)

この統計データには、以下のような項目がある。
①今までに恋人として交際した人数(現在の配偶者、恋人を含む)
②初めて恋人を持った年齢
③メディアの中のキャラクターや登場人物に恋をすることがあるか
④今、恋人が欲しいか
⑤今、恋人が欲しいと思わない理由
⑥異性と交際する上での不安
⑦雇用形態別 婚姻・交際状況
⑧性格別 「自分は異性に対して魅力がないのではないかと思う」割合
⑨都市・地方別 「そもそも異性との出会いの場所がわからない」割合
⑩「親などの家族から結婚するよう言われたことがある」割合
⑪「職場の人や仕事の関係者から結婚について聞かれることがある」割合
⑫現在の配偶者・恋人と知り合いになったきっかけ
⑬現在の配偶者・恋人と交際を開始するにあたって、どちらが積極的であったか
⑭現在の配偶者・恋人と出会ってから交際を始めるまでの期間
⑮知り合ったきっかけ別 交際を始めるまでの期間
⑯現在の配偶者・恋人と交際を始める前、交際相手に出会うことを期待しておこなっていたこと
⑰現在、恋人がいない人が交際相手と出会うためにおこなっていること
※各項目の頭は1~17までの丸付数字。環境によっては文字化けしているかもしれない。

いろいろな項目があるが、大きなお世話だという気もする(笑)
少子化対策の一環としての調査のようだが、どういう男女交際をしているのかが少子化の一因ではあっても、主因ではないと思う。

経済成長が右肩上がりに上がり続けることがないのと同じで、人口も増えすぎると減速する。これは生物学的な問題でもあり、微生物から高等生物まで、ある環境の中で生息できる個体数には限界がある。際限なく増え続けると自滅してしまうからだ。

この統計の中の7番目、「雇用形態別 婚姻・交際状況」が前述の記事の論拠となっている。そのページを画像として切り出した。元はモノクロなのだが、わかりにくいので色づけした。
▼雇用形態別/婚姻・交際状況

雇用形態別/婚姻・交際状況

雇用形態別/婚姻・交際状況



この結果を見て「非正規雇用だから彼氏彼女がいない」と読むのは早計だ。
因果関係として成立していないからだ。

彼氏彼女がいない原因は、非正規雇用だからだ。……と因果関係を証明するためには、原因として考えられる要素から、非正規雇用以外の原因を排除しないといけない。
この調査では、正規雇用者と非正規雇用者に対して、異性関係の有無を聞いているに過ぎない。……ということ。
つまり、モテない原因を特定する調査ではない。

一般的に、ルックスのいい人はモテるだろう(笑)

見た目の容姿は、人間に限らず動物でも重要な要素であり、見た目がいいことは良い遺伝子を持っているというシグナルになる。異性を引きつけるために、極彩色の羽毛でディスプレイする一部の鳥類は、イケメンであることを誇示する。目立つことは天敵に狙われやすくなるデメリットもあるが、それよりも雌をゲットする方を優先している。
美男美女であれば、異性を引きつける可能性が高くなるのは、今も昔も変わらない。

モテない原因が雇用形態にあるのだと証明するためには、「調査対象者はイケメン限定」というふうにしないとわからない。もっとも、イケメンの基準も難しいが。
かつて、結婚相手を選ぶ基準として「三高」……「高学歴」「高収入」「高身長」などといわれていたが、それらの条件は今でもあまり変わっていないように思う。
だとすれば、イケメンであるだけでなく、学歴、収入、身長なども同程度の正規雇用者と非正規雇用者で比較する必要がある。

調査データで、気になることがある。
それはサンプル数を示す「N」値の違いだ。

男性の場合、正規雇用者は「N=2868」、非正規雇用者は「N=662」となっていて、約4.3倍も違う。これは雇用形態の割合を反映しているようで、統計局による2012年7月~9月の「年齢階級,雇用形態別役員を除く雇用者数」によると、
●男性・15歳~34歳(在学中を除く) 正規雇用者=660万人
●男性・15歳~34歳(在学中を除く)非正規雇用者=141万人
ということで、この構成比だと約4.6倍になる。

標本調査の場合、サンプル数が母集団を公平に抽出しているかどうかが問題になるが、無作為抽出だとしてもアンケートに積極的に答える人とそうでない人もいるわけで、偏りがないとは言い切れない。おそらく傾向としては妥当だと思われるが、141万人中の662人が公平なサンプル抽出かどうかだ。せめて、サンプル数は同等くらいにした方が、同等のサンプル数の中での割合ということで公平的ではある。

見た目の容姿は、男女関係だけでなく、就職にも少なからず影響があるともいわれる。

「顔採用は存在する」 テレビ番組の実験結果に賛否両論 (1/2) : J-CAST会社ウォッチ

その結果、担当者の全員がモデル2人を合格者に選んだ。同様の実験を、女性を含む担当者で行ってもほぼ同じ結果となり、男性モデルと男子学生で行った場合でも、すべての票がモデルに入った。

この結果について大阪大学の大坊郁夫教授は、番組内のVTRで、

「日本の場合はもちろん能力も大事だが、この人と一緒に仕事ができるのか、仲間としてうまくやっていけるのかという関係を大事にする」

として、見た目の印象が採用に影響を与える可能性があるとコメントしている。

この実験には賛否があるようだが、一理はある。

また、就活をする学生にも、その意識はあるようだ。

容姿は就職に有利?全体の89.6%は「有利」と考えていることが判明(ネットリサーチニュース) – 経済 – livedoor ニュース

livedoorネットリサーチでは、「就活はイケメンと美女が有利だと思う?」と題してアンケートを実施し、これに対して1755件の回答が寄せられた。

そしてそのうちの89.6%が「思う」と回答している。

容姿が多少なりとも就職活動に影響するならば、正規雇用者にはイケメンが多く、非正規雇用者にはイケメンが少ない……という仮説も考えられる。
この仮説が成立するとなると、「非正規雇用者に彼氏彼女がいないのは、イケメンもしくは美人が少ないからだ」……という因果関係を想定できることになる。
つまり、原因はこの一例に限らず考えられるので、冒頭の記事の著者の論拠は崩れてしまう。

男女関係絡みの調査として、まとめのページが以下にある。

自分だけじゃなかったんだ!数字で驚く恋愛データ – NAVER まとめ

余談だが、「①今までに恋人として交際した人数(現在の配偶者、恋人を含む)」について。
以前、ディスカバリーチャンネルの恋愛テーマの科学的検証を行った番組の中で、過去の異性関係を問う質問をした場合、男性は実際よりも多めの数を言い、女性は実際よりも少なめの数を言う傾向があった。
男性は見栄を張り、女性は過去を隠したい心理が働くそうだ。
もし、彼女が過去につきあった男性は2人、といったら2人以上と思った方がいいのかもしれないね。

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